エピソード3〜立場 正直言って嬉しいだけではなかった・・・・・ もう表舞台立つことはないかと思っていた。 こんな風に毎日過ごすのも悪くないと・・・・ 暗闇の中に潜む悪魔のゆりかご・・・・ そこから出て行くのは苦痛にも思えた。 世の中に出て行くことが昔僕が思い描いて いたほどに明るいものでないことは知っている。 出口のないトンネルのようなものであることも・・・・ しかし、そこには海底に潜む、黄金があるようも思える。 何が正しくて、何が間違いなのだろう? 答えのない世界・・・・・ それがこのように苦しいものだとは思わなかった。 僕は悪魔のささやきの方へ、 完全にプロテクトされたシェルターへ帰ろうとしていた。 しかし、その時、僕は思い出した。 あの時、彼女は僕に何を言おうとしたのだろう? なぜ僕を捨てておかなかった? もういい!! 一人にして欲しい・・・ そっとしてくれよ!! 次の瞬間・・・・なぜか僕は暖かな感覚に包まれた。 そう、それはちょうど小さな子供が自分の母親の腕 で眠りにおちるような・・・・ 「タカノリならきっとできるよ!!」 そんな言葉を思い出した・・・・ かつての彼女の言葉は、今も僕の胸に残っていたのだ。 僕はもうすでに立ち上がる必要があった。 僕は明日の夕方に会えるという旨をメールし、今日はもう 寝ることにした。 その夜、何日ぶりか、なかなか寝られなかった・・・・・ 翌日、僕は新宿の高層ビルが立ち並ぶ場所のひとつを訪れた。 ここにきたのは学生のころに就職活動をしていた とき以来であろうか? 待ち合わせ場所につくと、すでにその相手 らしき人間は僕を待ち構えていた・・・・・ 「お待ちしておりました森様!!」 その男は紳士的だった・・・ 愛想は良いが、こびへつらった様子もなく、 自信に満ちているが、それでいて謙虚さも感じ させるような人物であった。 私たちは軽い自己紹介をすませると、 近くのカフェに入って、話をすることにした。 そのカフェは禁煙と喫煙がある高級ハンバーガー の店と同様な形で分かれていた。 私たちは禁煙席で話をすることにした。 「森様・・・・私が今日あなたにお声をかけたのは、 あなたが、より教育を受ける立場に対する姿勢が 重く感じられたからです。 あなたにこれからご協力してもらいたい商品創りは そのようなあなたの姿勢が強く現れたものにしてい ただきたい。」 ・・・・・僕は・・・・そんなにたいした人間ではない・・・ 僕はこの人物に、この人物の期待を応えられないの が恐かった・・・・ 何より、唯一今僕に期待してくれている人を裏切ること が恐かった。 しかし、その商談にはとても興味が持てた・・・ 僕の教師になりたいと思える夢に近づくようにも 思えた。 その教材を使う人たちの笑顔が見えた・・・・・ 「分かりました・・・・もし、貴社がお客様の幸せを 第一に考えられるのならば、私も喜んで協力させて いただきましょう・・・・ 今までにない、この教材を使った人たちが一人残らず 笑顔になれる・・そのような教材にしましょう!!」 「森さん!!・・・・・・・」 二人は熱く握手をかわした・・・・・ 前へ ホームに戻る 次へ |